うたがいのはなし




うたがい の話
 たぶん、妬いているし疑っているのだ。

「あ」

 かん、とにぶい音がして、それにあわせるようにちいさな声がひびく。あたしはかまわず肩をつかむけど、一瞬それてしまった気はもうもとにはもどらないら しい。ハルトマンは身をよせるあたしを本気で腕でおしやった。

「あー…、ちょっと中身のこってた」

 ベッドのうえにふたりしてぺたんとすわりながら、首をまわしてハルトマンの視線をおいかける。肩ごしにながめられた、あたしの背後にあたる位置におかれ たひくいテーブル。そのわきには瓶が一本ころがっていて、その飲み口あたりから液体がこぼれていた。なるほど先程の音はこの瓶がなにかの拍子にテーブルの うえからおちた音だ。

「ふいとかないと」
「シャーリーやっといて」
「いやー」

 べえと舌をだしながら顔をよせる。鼻先同士がくっつくくらいにちかづいて、でもハルトマンはまゆをゆがめた。
 たとえば、キスしたいのもだきしめたいのも、大抵があたしなのだ。

「もうねるのか」
「たぶんね」
「いっしょに寝ていい?」
「うん……いいよ」

 表情でやめろと語られたので、しかたなしに身をはなす。ハルトマンの部屋で寝るのはまだ片手でたりるほどしか回数をかさねていないが、それもまたあたし が申し出てやっと実現することだ。
 ふと、ハルトマンのてのひらがあたしの手をとる。それからてのこうをなでまわされて、まるで夢中な顔であたしの手であそぶ。基本的にあたしには興味がな い、そのくせ、急にこうやってくっついてくるのだった。そういう戦略なのか、それともまったく意識せずの行動なのか。どちらにしても、あたしにとってはそ れは一大事なのだ。

「こぼれたのは、バルクホルンにきれいにしてもらうのかい」
「え」

 反射的に、やつの顔があがる。無表情だ、いつもそう、ハルトマンは、部屋にいるときは大抵表情をけしているのだ。

「正直、ここはおちつかないよ。あいつがいつどなりながらとびこんでくるか、わかったもんじゃない」

 肩をすくめて、自分からここで寝たいと言いだしたくせに非難する。こどもみたいだ、つまるところ、あたしはこんなに器がちいさい。かっこうわるくてしか たがないのでやっぱりきょうは自分の部屋で寝ようとたちあがる。いやたちあがりかける。つまりあたしはたてなくて、なぜかといえばハルトマンに思いきり肩 をおされたから。ぽす、とシーツに背中がおちる。

「トゥルーデの話ばっかりだね」
「……」

 ハルトマンに見おろされるのは壮観だった。影がおちた表情、あたしの視界にも影をおとす。たとえば、いまこうやってハルトマンがあたしをおしたおしてい るような瞬間にやつがどなりこんできたらどうするのか。本当は、こころのすみでそうなってほしいと思っているんじゃないか。そのときやつがどんな顔をする か、見てみたいと思っているんじゃないか。だから、ハルトマンはあたしが自分の部屋にきたがることをこばまないのだ。

「ハルトマン、あたしのことすきって言って」
「シャーリーってそういうこと言うんだ」
「言うよ」

 鍵をかけていないことはしっている。そんなにあいつをからかいたいのか、たしかにやつが長いつきあいの友人のそういう現場を目撃してしまったときにどん な顔をするのかはあたしだって興味がないわけではない。しかしだ、ハルトマンは、ひょっとしてそんな好奇心以上の気持ちでもって、バルクホルンであそぼう としているのではなかろうか。

「あたしって、器がちいさいかな」
「たぶんわたしよりは」
「……」

 おそらく、本当にそのとおりなんだろう。あたしは結局、からかいたいなら、あそびたいならあたしでそうしなさいよ、と、まったくはずかしいことを考えて いるわけなのだ。そっと手をのばしてひきよせた。ハルトマンは抵抗しない。きゅうとだきしめると、ハルトマンはすんと鼻をならす。ないているようなしぐさ だと思った。

「シャーリーの胸やわらかい」
「もんでいいよ」
「それはめんどくさいな…」
「……ああそう」

 本当はわかっているのだ。べつに、バルクホルンにたいして特別な感情をいだいでいるわけじゃないんだ、だって、ハルトマンはあたしのことがすきなのだ。 ばかなあたしが、それをしんじきれないだけの話なのだ。たとえば、あたしとふたりだとあんまり笑わないねと指摘したことがあった。するとハルトマンは、わ たしのこの表情はいちばん気をぬいてるときのなんだよとけっこううれしいことを言った。しかしである。あたしはなんとも、なさけない人間だったのだ。

「ハルトマンは、もうちょっと笑ってもいいと思うんだよ」
「なんかまえにも言われた気がする」
「あたしも言った気がする」
「じゃあさ、シャーリーがおもしろい話をすればいいと思うな」
「あたしの話はいつだっておもしろいさ」

 ただね、おまえが真面目にきいてないだけなんじゃないか、とかね。すぐそういうところに思考がとぶわけだ。まったく、穴があったらはいりたいね。あた しっていつからこんなに必死なやつになっちゃったんだろう。

「ハルトマン」
「はい?」

 そういう、けだるげな面倒くさそうな返事にも、あたしは簡単に傷つける。ねえ、ハルトマン。あたしって、それっくらいにおまえのことがすきなんだ。そう いう気持ちをこめて、額にキスをする。それでもハルトマンは、くすぐったそうに息をつくだけなのだった。





いちさんにもらっちゃったよ、なお話その 2!!!!!!!!!!!!!シャーリカですよシャーリカ!!!!2期のシャーリカ絶対来てると思う!おもう!!!おもいます!!!そもそもエーリカは天 使なので世話焼きなシャーリーがほっとけねえなこいつ→あれもしかしてあたしこいつすきなのかも ってなるまでにそう時間はかからないわけでして、つまり えーりかまじてんしってことです!!うまくことばにならないけどシャーリカ大好きです!!!いちさんありがとうありがとう!!

2010/9/9



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