あなたはしあわせになれるわ と。
 闇からよばわる声がしたような気がして、私の目は頭からじんわりと熱くなってしまうのでした。

 だってそれは私がいちばんしあわせだったあのころに、私の大好きだったあのひとがなんどもなんども、私がもういいわ、と口を尖らせるまで重ねた言葉だったのです。その手には年輪のようにしわが刻まれていたというのに、私の頭を撫でるその手はどうしてかすべすべでやわらかくて、かつあたたかくて。

 なみだはね、と赤い髪をしたその人は微笑んで、歌うように私に囁きました。彼女がいないほうの傍らには、私の敬愛してやまない、憧れて仕方のない、けれど届くような気もしない、黒い髪をした人がちょっと照れくさそうな顔をしてただ座していて。気休めの励ましよりもずっと、それがありがたく思えました。

 なみだはね、かなしいときにだけ、ながれるのではないのよ。

 耳を優しく撫ぜるような、温かな言葉は恐らく彼女にとってはプレリュード代わりだったのでしょう、赤い髪と瞳をして、きっちりとした軍服に身を包んだミーナ・ディートリンデ・ヴィルケと言う名前の高貴な鳴り物は、貴女のためのコンサートはまだ始まったばかりよと言わんばかりにその美しい奏をあたりに響かせるのでした。

(あなたは、しあわせものなのよ)

 私はそこにどうしてか今は亡き祖母の、少し枯れた声をした、けれどとても優しくて深い囁きを聞いた気がしたのです。




このわたしがせかいでいちばん




 だからあ。
 えー。
 そうじゃなくて。
 あ、そっか。

 談話室に響くのは、同僚たちのかしましい話し声。内容はきっといつもどおりおおよそくだらないことで、だからこそ私はそれに混ざることもなくそれをぼんやりと見ていたのでしょう。他愛のない彼女たちの話に分け入ることは私にとってはとても困難で、苦手なことだったのだけれど、実際のところ私自身、その様を見ていることはそこまで嫌いなことではなかったのです。苛立つ理由があるとすれば、それはきっとそうした会話だとか、そうして笑っていられる彼女らの天真爛漫さだとかが羨ましかったからに違いないのでした。

 今日はネウロイの襲撃を前日に終えた、いわゆる『休日』。そして休日とて己の鍛錬を欠かすことのない坂本少佐の訓練にご一緒させてもらい、それを終えて浴場で汗を流した後の、少し気だるい時間で。特に予定のなかった私はひとり談話室のソファに座って一時の休息を摂っていました。誰を待っているということではなく、けれどもなんとなく、部屋でひとりすごす気分にはなれなかったから。

「あのー…エイラさん、どうしたんですか?その頭の」

 きっと私は常に非ずぼんやりしていたのでしょう、同い年のスオムス出身少尉にふと語りかけた、宮藤さんのそのひとことではっと我に返ったのでした。そう言えば「よ、ペリーヌ」だとか「こんにちは、ペリーヌさん」なんていう言葉を意識のどこかで聞いた記憶がおぼろげながらあって、非常に情けないことに私はそれに応えることさえすっかり失念してしまっていたのですから。

 けれど、だからといって改めて彼女たちに呼びかける勇気など到底あるはずもなく。それですから私は、いつの間にか談話室のソファのいくつかにそれぞれ座り込んでいる同僚たちを、彼女らに気取られないように見回すだけにとどめたのでした。どうやら談話室にやってきたばかりらしい宮藤さんと、リーネさんが私の斜め前のソファに座っていて、それより幾分か前からここにいるらしきエイラさんとサーニャさんは、私の目の前に座っていました。もっともサーニャさんはいつものごとくすっかりと夢の中で、恐らくは彼女にとってこの世でもっとも安心できる場所であるはずのエイラさんの傍らで目を閉じて、すうすうと規則正しく肩を上下させていたのだけれど。

 そして、そのエイラさんの頭の上には。

「なんだよ、文句あんのか、宮藤」
「も、文句なんて一ッ言もいってないじゃないですかあ。ねえ、リーネちゃん」
「そ、そうですよう。」
「嘘つけ!お前らさっきから顔が緩んでるの、気付いてんだからな!!」
「あああ、ほらほらエイラさん、怒ったらサーニャちゃんが起きちゃう起きちゃう!」

 指摘された頭上のそれに、口を尖らせていきり立とうとするエイラさんを慌てて宮藤さんたちが制止して。そのもっともさに、エイラさんは不満げながらも静止しないわけにはいきません。このいたずら好きで子供っぽい黒狐の唯一の弱みは新人二人にも知れ渡るくらいすっかりと部隊の中でも認知されるところとなっているのに、それでも彼女はそれを大切にする手をどうしても弱めることが出来ないようで。そんな彼女の弱点の現われが、その頭の上からふわりとみずみずしい香りを漂わせていました。

「サーニャちゃんに作ってもらったんですか、そのはなかんむり」

 慈しみをいっぱいに湛えたような、リーネさんの柔らかな言葉がまっすぐにエイラさんに届くと、エイラさんもついに意地を張ることすら出来なくなって「ウン」と頷きました。そのうえ春の野花の綺麗なものをひとつひとつ摘んで編み上げた、彼女にとって最も大切な女の子からの冠を、ちょいと見上げて少し笑むおまけまでつけてしまうのです。この最前線の戦場に、生え抜かれてやってきた北欧のトップエースとは思えないその優しさに満ちたその表情は、愚かだけれどもとても羨ましいものに私には思えるのでした。

 そう。あんなに抜けた笑顔を浮かべることが出来るのは、きっと彼女がしあわせにちがいないからで。
 その傍らにいる少女もまた、眠りに就きながらでさえ満足そうに笑んでいるのはやはり彼女もまたしあわせだからなのだと私は半分やっかみながら考えてしまうのです。きっと彼女は一緒に出かけた野原で、今日も無自覚に目一杯エイラさんにわがままを通したのでしょう。それを聞くエイラさんもまた、無自覚に「きょうだけだかんな」なんてとっくに期限の切れた免罪符をそこかしこに貼り付けてそれらをすべて制止も禁止もせず、むしろ手を伸ばしてエスコートするくらいの心持ちで取ってあげたのに違いないのでした。本人たちこそ自覚はないけれど、それは私からしてみたらとてもとてもしあわせな光景で。けれどもふたりともそれに気付いていないこと自体が、やっぱりしあわせにちがいないのでした。

「ねえねえエイラさん、その花冠、あとでドライフラワーにしたいんですけどだめですか?」
「…さ、サーニャがいいって言ったらな!」

 ハーブとドライフラワーと、生花で部屋が埋め尽くされているリーネさんが目を輝かせてそんなことを言うと、意外と押しに弱いところのあるエイラさんが少しうろたえてそんな言葉を返します。そうして、そこからまたサーニャさんがどうだとか、リーネさんの好きな花が何だとか、他愛のないやり取り。私は結局会話に混ざるタイミングをつかめないまま、エイラさんの頭の上にある花冠を見つめているだけです。

「…ねえ、ペリーヌさんもそう思いますよねえ。サーニャちゃんのはなかんむり、とっても綺麗。」
「…え?ええ?」
「ん?おー、ツンツンメガネ、起きたか。目ェ開けたまま寝るとか、お前意外と器用だなー」
「ね、寝たとか、そういうんじゃありませんわ!」
「ペリーヌさんも居眠りとかするんですね!なんか意外です!私も扶桑にいた頃はよく授業中居眠りしちゃって…へへへ」
「あなたと一緒にしないでく……いえ、なんでもありません」
「私もよく寝たなー。座って話しきいてんのかったるいもんなー。士官教育とか真っ平ゴメンだよな」
「もー…ふたりともぉ…」

 ──そんな風に思っていた矢先に、突然話を振られて。今度は私が戸惑ってしまいます。いつもどおりのからかうようなエイラさんの言葉に、どこかずれた宮藤さんの言葉。眠っていたわけではないものの無反応だったのは確かで、否定できるはずもなく固まっているとそれでも勝手に会話はまあるく収まって、誰ともなしにふふふ、と笑い始めるのでした。それは嘲笑の類ではなくて、ただきっと、その場の楽しさから自然と漏れ出た笑みで。…どうしてか私もひどく救われた気持ちになって、どうにか笑顔を作ろうとして。
(……え?)
 …けれど、どうしてか、どうしても、出来なくて。

 そう。気がつけば、すっかりと。
 私は彼女たちが浮かべるような爛漫な笑顔の浮かべ方を、すっかりと忘れてしまっていたのです。

 エイラさんの頭の上のそれはそのままに、とりとめもない彼女たちの話はまた別のものにシフトしたようで。それは言葉尻を拾えば宮藤さんとリーネさんが今日一日何をして過ごしたかと言ったような内容だったのだけれど、己の身の変化に気付いた衝撃でそれらを拾う気力をすっかりと失っていた私は再びぼんやりとしながらエイラさんの花冠を見やることにしました。何より私は久しく見るその色に、香りに、形に、喪って久しいものを、思わざるをえなかったのです。それは幼いころの記憶。まだ、ガリアが平和で美しかった頃の。

(けど、わたくしのシャトーはもう、焦土なのだわ)

 ちらりと窓の外を見ると、こ憎たらしいほどに晴れた空。いっそのことどんよりと曇っていてくれれば私の心が沈むのも仕方ないと思えたのだけれど、内心と裏腹の景色は切なくなることすら許してくれないほど青々としていて、私はついうつむいて、陰鬱とした気分を気取られないように唇をかみます。そうすることでなにかが変わるとは思えなかったけれど、そうしていないとどうしようもなくなりそうだったのです。

 蒼く蒼く、晴れた空と。
 満面に彩りを誇る、故郷の花畑。
 春になると父と、母と、よく連れ立って出かけたもので。私はそこで母に教えてもらった花冠を、まだ小さくてたどたどしい手で必死に編みこんでいたのでした。

(おばあちゃまにおみやげにするの、だからじょうずにならなくちゃ。)

 どうしてそんなに一生懸命なの、と尋ねる母にそう答えたら、えらいわね、と父とともに頭を撫でてくれました。…その光景は今も、目を瞑れば鮮やかに蘇るほど私の心を支配してやまないものなのでした。そう、こうして意識をその彼方にやるだけで、まだ平和で、美しかったころの故郷が目の前に広がるのです。いま、私の眼前にあの懐かしいシャトーが広がっているように。

(……あれ?)

 ふっと、顔を上げると。ブリタニアにある基地の、談話室であったはずの場所がすっかりと様変わりをしていました。
 そう、そこは、実家のシャトーの光景で。そして私は幼い私の姿で、花冠を編んでいるのでした。少しはなれたところにはお父様とお母様がいて、私のことを優しい笑顔で見守っていて。

(なんで、どうして?)

 そんな疑問が一瞬、ほんの一瞬だけ頭を掠めましたが、それは即座に霧散して消えていってしまうのです。そして、だんだんと『今』のこともおぼろげとなって……私はいま、自分が夢の中にいるのか、それとも現にいるのか、もう分からなくなっていました。だってそんなことよりも、あの頃まったくと言っていいほど上手く出来なかったあの花冠を今はこんなにも上手に編むことが出来るのです。
 ──それは、ガリアが落ちたあとも、どうしてか花畑を見つけると花冠を編む癖が直らなかったからで。まるでそれが使命であるかのように繰り返し繰り返し練習をしていたら、いつの間にか私の得意とするところになっていたからなのでした。だってその記憶は、私と家族とのとてもとても大切な思い出だったから。辛いときにすがることの出来る、数少ないものだったから。

(ねえねえ、みて。おばあちゃま。ペリーヌが作ったのよ。じょうず?)

 あるいは、子供ながらに。そう言って花冠を差し出されたときの祖母の苦笑ぶりが頭のどこかに引っかかっていたからかもしれませんでした。幼い私は結局一度もちゃんとした花冠を一人で作ることが出来なくて、母の手伝いでようやっと形になっていたぐらいであったと今ではちゃあんとわかっていました。祖母にきちんとした花冠を贈ることが出来なかったこと。それは故郷に遺して来た多くの後悔のうちのひとつでもあったのです。

 でも、今、私が編んでいる花冠は誰がどう見ても『完璧だ』といえる代物で。きっとこれならば、祖母も苦笑することなく、心からの賛辞を私にくれるであろうと思えました。だから私はそれを差し出して、父と母にこういったのです。

(おばあちゃまのおみやげができたの!じょうずでしょう!)

 すると、ふたりは。
 ああ、じょうずだよ。じょうずだわ。そういって、私の頭を、優しく撫でて。ああ、嬉しいわ。幸せだわ。胸に湧き上がって顔まで昇ってくるその喜びのままに笑みを浮かべて、私はもう一度彼らに呼びかけようとしました。

 ……それなのに。

(おとうさま、おかあさま?…どこにいるの?)

 ふと、顔を上げれるとそこは真っ暗闇で。誰もいなくて、見えなくて。
 そして私は背後に、迫り来るあの黒い悪魔たちの姿を、彼らの吐き出す赤い光を、みたのでした。

 ソファの沈む感覚とともに両傍らに温もりが生まれたのを感じて、私は再びはっとしました。
 気がついたら今度こそ、私は眠っていたらしく。見回すと赤い髪をした人と、黒い髪をした人が、すぐ傍らに座っていて、私の肩には誰かが掛けてくれたらしき毛布がふわりと掛けられていました。

 起きた?赤い髪の人がそう語りかけるかのように覗き込んできて、私は目じりに浮かんだ涙を拭うことも忘れて驚きに口をぽかんと開けることしか出来ずに固まるしかなく。それでもやっと硬直から抜け出してそれを拭おうとしたら、優しく視線で制止を受けてそれもできなくなってしまいます。

「なみだはね、ペリーヌさん」

 傍らで本を開いていたミーナ中佐が歌うようにささやいたので、私ははい、と頷きました。その逆の隣にいる坂本少佐は何も言わず、少し照れくさそうにお茶をすすっていて。けれど余計な言葉を掛けられることをひどく苦手とする私には、それがとてもとてもありがたいことに思えました。そう、それはきっと、それこそがきっと、私をよく知るあの人なりの優しさだったのです。

「ペリーヌさん、涙はね、悲しいときばかりに流れるのではないのよ」

 確信を射ているような、けれどもどこか不明瞭な、彼女の言葉が私の耳から胸の所まで下っていって。どうしてなのかわからないけれどもじんわりと熱い何かがまたそこから目頭のほうへとのぼってくるのです。彼女の言うところによると、今私のこの胸を包んでいるのは、悲しみではないはずで。……でも、胸を熱くするこの感情になんと名前をつけたらよいのかを、彼女は教えてくれないのでした。…いつも彼女はそうなのです。優しく声を掛けてくれるくせに、手を差し出してくれるくせに、こちらから握ろうとしなければその手を取ってはくれない。けれども彼女のその的確な力加減のおかげで、きっと人は自分の一人の力で立ち上がれたような錯覚を、己の自信としてもつことが出来るのでしょう。

 ♪、♪、♪

 ゆっくりと、口を開いたその瞬間。彼女は中佐という肩書きを持った軍人ではなく、談話室じゅうにその音色を響かせる高貴な鳴り物と変貌します。歌っているのはきっと、彼女の祖国の歌。そう言えばどこかでハルトマン中尉が鼻歌で歌っているのを聞いたような気がして、そう昔のことではないはずなのに懐かしさがこみ上げました。だってそのとき、何の気もなしになんの歌ですか、と尋ねたら、ハルトマン中尉はあのいつもの無邪気な笑みでこう答えたのです。

(ともだちのうた!)

 あなたは幸せになれるわ、と。
 その瞬間、かつて祖母が何度も何度も私に繰り返したその言葉が脳裏に蘇りました。もういいわ、分かってるわよ、おばあちゃま。私が呆れてそう言っても、何度でも語って聞かされたその言葉。

 あなたは幸せになれるわ。いつでも、どんなときだって、あなたは一人じゃないの。

 ミーナ中佐の声にまじって、どうしてか祖母の言葉が耳を通り抜けて心に響くのです。あのころなんとも思わずに聞き流していたたくさんの言葉が、今になって。なぜかしら。もしかしたら時限のついた魔法だったのかしら。そうとすら思えるくらいに。

 祖母の声とともに浮かぶのは、仲間たちの姿。臆病なスナイパーに、勢いばかりの豆狸、自由気ままな子猫に、スピード狂いのウサギさん。真面目で堅い、ずぼらで小悪魔な、二人のトップエース。何を考えているのか分からない黒狐といつも眠っている黒猫。そして、坂本少佐とミーナ中佐。意地っ張りでつっけんどんで、口先ばかりの私をそれでも仲間として受け入れてくれている、一風変わった各国のエースたち。

(あなたはひとりじゃないの)

 祖母の言葉がミーナ中佐の歌と混じって、ミーナ中佐の優しい言葉になってゆくのを、迫るほどに感じました。
 じわじわと目に浮かぶ先ほどとは別の成分をした熱いものに、中佐の言葉の意味をようやく知れた気がして、私はぼろぼろとそれを隠すこともせず、いつのまにか顔をくしゃりとほころばせていたのでした。

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「……いつ聞いても、ミーナの歌は綺麗だな」

 沈黙をようやく破ったのはバルクホルンで、それまではハルトマンも、あのルッキーニでさえも、だんまりでミーナ中佐の歌に聞き惚れていたようだった。

「どうよ、私の予想。風呂いって戻ってきたらなんとかなってるって予想通りだったろ?」
「…うわあ、なんか白々しいよ、エイラさん」
「何言ってんだよー。私はちゃんと、そろそろミーナ中佐たちが談話室に来る頃だなって思って、談話室に毛布まで用意してったんだぞ!」
「…かけるのが面倒だから置いてこう、って言ってたじゃないですか…」
「それはそれ、これはこれ。結果オーライ、結果オーライ!」

 少し前までペリーヌと一緒に談話室にいたらしいエイラとミヤフジとリーネの掛け合いが聞こえる。その横でサーニャが首をかしげているのは、きっと眠っていて何も見ていない聞いていない状態だったからだろう。いつものようにいたずらっぽい笑みを浮かべているエイラの頭の上には少々不思議なものがあって、私はそれがおかしくて仕方がなかったのだけれどこれは指摘したら怒るだろうな、と思ってやめておいた。ついでに目を輝かせて指差そうとするルッキーニの口を押さえて火種をもみ消してやるというおまけつき。ああ、私って本当に苦労人だよな。

 我々に足りないのは団欒である!
 そんなハルトマンの訳のわからない号令により談話室に集められた私たちは、それ以前に談話室前に集まっていた面々とともにすっかり待ちぼうけを食らっていた。というのも、そのときもちょうどミーナ中佐の歌が奏でられている真っ最中で、さらにはなぜか涙目になっているペリーヌをはさんで座っている中佐と坂本少佐の光景に、すっかりと談話室に入り込むタイミングを逸してしまったからで。

 でも確かに結果オーライかな。だって、こんな綺麗な歌邪魔しちゃ悪いもの。いつもどおり、私の胸の辺りに収まっているルッキーニもひどくおとなしくしていて、いっそのこと珍しいくらい。…と、さっきまでおとなしくしていたはずのハルトマンが突然扉に背をつけて中の様子を伺い始める。その手には拳銃。

「…なにやってんの」
「突入の準備。」
「…さいですか」
「なにさ、行動の理由は聞いてくれないわけ!?」
「いや、聞くだけ無駄かとおもっ…あだっ!!なにすんだよハルトマン!!」
「だって腹立つじゃん!ペリーヌ一人だけミーナとかミーナとかミーナとか少佐とか独り占めしてさあ!!われわれに足りないのは団欒!団欒はみんなでするもの!!わかる!?」
「……わかったことにしとくよ……」
「返事は、はい!でしょ!」
「あー、はい、はい」

 げんなりするのは、その横でバルクホルンのやつがやたら納得した顔で頷いているからだった。カールスラントのやつらって、基本まじめな癖におかしなところみんな抜けてるから困る。無駄にイモ好きだったりとか。こないだなんて三人で突然寸劇始めてるし。あれは傍から見たら異様な光景だった。無邪気に「なにやってんのかなあ」というルッキーニになんて弁解しようか小一時間悩んだくらいだ。中間管理職の虚しさってやつだな。

「シャーリーあれやってよ!魔法で投げるやつ!私があそこを引き裂く!」
「いや、だめだろ…それに無理だろ…」

 いつにもましていきりたっているハルトマンを額を押して制して、私は談話室の中をもう一度見やる。
 泣きながら、それでも幸せに笑うペリーヌに心のどこかでほっとして、けどなんでかやっぱりちょっと私も悔しい。それは、上官二人をすっかり独り占めしているペリーヌに対してなのか、それともそうしてペリーヌを二人して存分に甘やかしている坂本少佐たちに対してなのかは、じぶんでもよくわからない。もしかしたらそれはどちらもなのかもしれない。だってほら、ハルトマンの言うとおり、団欒ってのはみんなでするもんなんだ。私たちみんなが家族であるとミーナ中佐が言うなら、あの温かで和やかな光景に私たちが加わる権利だって十割に増し加えて十二分にあるはずで。

 だって、そう。わたしたちはひとりじゃないんだ。何かの縁でだって、それがすっかり腐れていたって、出会えたことはきっと奇跡で。奇跡だとしたら、私たちはみんな、この世界に愛された幸せ者なんだろう。なあペリーヌ、そんなこと、お前だって分かってるだろ?

 だから、私は腕の中の子猫にこう囁きかける。

「じゃましにいこうか、ルッキーニ」







なんか組長さんがものすっごいもゆるペリーヌ漫画描いてらっしゃったので調子に乗ってSSとか書いちゃいました!
どうせSSにするんだからいろいろ書き加えちまえ!とえいらにゃとかハルトマンとかハルトマンとか趣味で付け加えましたすいません
ペリーヌ!!お前はしあわせもんなんだ!!!
関係ないけどハルトマンの歌ってた「ともだちのうた」がリーネちゃんの「Friend-Ship」だったらどうしよう吹いちゃう

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