それは夜半も過ぎた真夜中の事。
突然ギィ、と部屋の扉が開いて、うつらうつらしていた私は目を覚ました。寝ぼけて部屋を間違えたサーニャが『偶然』この
部屋に入り込んでしまうことはあるけれど、それにしても、サーニャが帰ってくるには早すぎる。
まっすぐに私のベッドまで歩いてきて、ボス。サーニャと同じようにこちらに倒れこんできた人物を見つめて顔をしかめた。

「…オイ、ペリーヌ。」
「なんですの」
呼びかけると、その人物は顔を上げて怪しく笑う。なんなんだ、わけがわからない。
「なんでお前が私のベッドにいるんダ」
「寒いからですわ」
「何言ってんだお前」

開いたカーテンから眩しいくらいに、月の光が差し込んでいる。
ウェーブのかかった金髪がキラキラとそれに反射して、何だかひどく幻想的だ。

「メガネないからって見間違えるにも程があるダロ」
「失礼ですわね、間違えてなんていませんわよ。ここはエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉の部屋。違いまして?」
「…あってるけど…じゃあ頭がイカレてんだ」
「そう思うのならそれでもいいですわよ、別に」

ツンツンメガネ…いや、今はメガネなんてないからただのツンツンか…いやそんなことはどうでもいい。とにかくペリーヌと
来たら、私の主張なんて何ひとつ聞きいれようとせずに毛布の中に入り込んでくる。そして私の胸にぎゅうと額を押し付けて
くるのだ。その位置がまた、サーニャのそれと全く同じで。そういやあんまり身長とか変わらないんだっけ、なんて思う。
高飛車な態度の割にコイツがチビすけだってこと、みんな意外と知らないんだよな。

「明るい夜は、嫌い。」
ぽつん、と。沈黙の中にペリーヌが言葉の葉っぱを放り投げた。当然拾い上げてやれるヤツなんて私以外にいないから、
仕方なしに黙って聞いてやる。
「ガリアが落ちた日を、思い出します」
私の寝巻きを濡らす熱いものは涙だろうか。そうではないといいと、思う。ペリーヌなんていっつもツンツンしてて、たまに
坂本少佐に対してデレたりすりゃいいんだ。そして私はその姿をからかって、笑い飛ばしてやる。それで、いいんだ。
いいはずなのに。

「坂本少佐のトコ行けばいいじゃんカ」
「……いやですわ」
「なんで」
「わたくしは、そんなに、弱くない。」
なんでコイツは私に甘えて来るんだ。これじゃあ突き放せないじゃないか。
『イッルは甘い』と故郷の同僚に笑われた事がある。けど、どうしても冷たくなんて出来ない。コイツが目の前で両親を
ネウロイに殺されたとか、そんな過去を中途半端に聞いた事があるぶん、余計に。

「…私だったら良いのカヨ」
「…」
答えは、ない。そして私はどうしたらいいのか、分からない。
(ああ、もう)
この光景を見たらサーニャはどんな顔するかな。怒る?泣く?それとも無反応?想像するだけで罪悪感がとうとうと湧くけれど。
(ごめん)
謝ることしか出来ない。なんとなじられても、私に今ここで怯えて泣いている人を振り払う勇気なんてない。

「今夜だけでいいですから」
「……今日だけだかんな」
免罪符のように放たれた一言に私は苦し紛れの返答を以って、白旗を掲げた。








保管庫に入ってなさげだからいいかなって
この前後のキョウダケダカンナネタも自分でした
何が怖いって次の日の朝の修羅場が怖い




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